ヘタレのやなさん

坂井市三国町で農業をして気ままに生きている記録です

真似もいいけど真似できないこともあるんよ

ちょうど受信した農テラスのメルマガが、先日の総会で話題になった研修生の話と被ったので、ちょこっと書いておこうかと。

 

農テラスのメルマガのタイトルが「不幸な農家の作り方」というもので、気になる方はバックナンバーとかあるのかな?よく分かりませんが、農テラスのメルマガを登録していれば、そのうちに似た話が送られてくると思います。(汗)

 

notera.co.jp

 

メルマガの内容を書くのはまずいと思いますので、あまり触れません。

このあいだの総会で出た研修生の話と被る部分について、ちょこと書いておきます。

 

その研修生はどうも大規模な施設園芸設備を入れてトマトを作りたいようで、そういった理想に近い形でやっている法人のところで現在勉強をしているそうです。

その研修生の方がどういった資本を持っているのか、分からないのですが、研修先の法人さんはもともと地元の名士で、それなりの地盤や看板、カバンが最初から資本としてあったりします。もちろん法人の社長さん(だよね?)はカレッジ卒業生で、もしかしたら今年で就農5年目になるのかな?なので、私や研修生の先輩にあたりますが、最初のスタートとなる資本力が全く違うことを意識する必要があると思うのです。(資本力が同レベルであれば問題ないのですが)

 

ちょっと話がそれちゃうのですが、私が園芸カレッジに入るときにもらったカレッジのパンフレットにその法人の社長さんが載っていて、出身は県外で旦那さんの転勤を機に福井にやってきたと書かれていたと記憶しています。その時は、へぇ~女性ですごい出来る人なんだと思ったのですが、いろいろと周りからうわさなり話を聞いていると、いやいや、どうも状況が違うぞということが見えてきたのです。

旦那さんの家が地元の名士であることや、JA対して影響力のある人が近くにいること等、少なくともゼロからスタートしているわけではなく、むしろ多くの資本がある状態での就農なので、同じカレッジ出身といっても天地ほどスタート位置が違うわけです。

そのあたり福井県は全く触れていないので、このパンフレットを真に受けてやってきた人は、就農時の選択を間違える可能性が多いにあるのではないかと個人的には危惧しています。(まぁ、今となれば騙されるほうが悪いのでは?と思ったりしますが。)

 

もう一つ話をそれちゃいますが、どこの県か忘れましたが、1本1万円のネギを売る農家さんっていうのがニュースで話題になったことがあります。結構、そういった話題に乗せられやすいタチなので、へぇ~すごい人がいるんだぁ~と感心したのですが、いろいろと調べてみたら、もともと事業をやっていたりして、経営の経験や販売のノウハウがある程度もっていらっしゃったのではないかということ。なので全くのゼロからのスタートではないので、なるべくしてなった人ではないかと思うのです。

ただ、問題なのはニュースで、新規就農で1本1万円のネギを売れるようになったとなると、じゃあ、私もできるんじゃないかと勘違いしてしまう人も出てしまう感じがします。その人の背景やスキル、経験や経歴等、よく見ておかないと、真似しようとしても失敗するだけだと感じるのです。

 

あと時代というかタイミングでも変わってきます。就農直前の研修生が就農をあきらめて就業に切り替えたっていう話が合ったのですが、その多くが補助金が出ても、補助金だけでは足りない部分の融資が下りないということでした。これは私の世代だと、よほど変な事業計画を立てない限りは無かった話です。今は審査が厳しくなってきているということもあり、なかなか融資が下りないっていう話も聞きます。

もっというと、私の2代前ぐらいの先輩たちで、融資限度上限いっぱいまで借りることができた人がいます。これは私たちの世代では、融資は1000万円以内に抑えるようにって言われていました。これもタイミングによる差になってきます。同じようにやろうとしても、運とかも絡んできます。あの人と同じようにやれば・・・という考え自体が、そもそもの間違いなわけで・・・。

 

で、なんでこんなことを書くかというと。総会で聞いた「どうせ補助金が出るんだったら最初からデカくやったほうが良い」という言葉が妙に引っかかって。

もちろん補助金を最大限使うのは、私も賛成です。でも最大限というのは限度額上限いっぱいまで使うということではなく、補助金では賄えない部分を自己資金や融資してもらう場合の金額によって変わってきます。

 

市町村によって、就農時の設備や機械に対する補助率が違うので、補助金で足りない部分の金額っていうのは変わってくると思いますが、坂井市の場合だと補助率が50%(国や県と合わせて)だったと思います。なので、半分は自己資金かもしくは借金する必要があるのです。

補助金は返さなくてもいいと仮定すると、自己資金を使った場合はせめて自己資金分を回収する必要があるだろうし、借金をした場合は返済をしていく必要があります。それを加味したうえでの、補助金を最大限使うということなのです。

 

例えば、補助率が50%で補助金の上限が3700万円だとすると、補助金を最大限までもらおうとするならば、少なくとも7400万円の設備投資が必要となります。半額の3700万円は自己資金、もしくは借金という形になるのですが、自己資金だと何年で回収できるのか、借金だと返済ができるのかを考えていないと、資金繰りがものすごく苦しくなってきます。(融資をマックスで借りた先輩は、おそらく来年から返済開始になるはずで、単純計算だと毎月50万円前後の返済額になるはずです。少なくとも手取りが600万円/年以上ないと手元の資金が減っていくことになります。)

 

次に重要になってくるのは売上の予測。どこに売るのかどうやって売るのかというところで、単価も変わってきますし、当然、売上も変わってきます。よくあるのがJAに出荷すると手数料が高いので、すべて直売所や小売りしますっていう人の場合、値段のつけ方が自分の感覚でつける人が多いような気がします。また、たとえその値段で販売したとしても、すべてが売れるとは限らないのでそのあたりを考慮する必要があります。

 

ある程度の販売予測が見込めるところに売りに行くのであれば、事業計画として入れてもいいと思うのですが、直売所や小売りのみだと予測するのがよほどの経験者じゃないと難しいと思います。

 

売上の予測が出来たら、そのあと必要な経費を出していって、その差額の利益がいくらになるかを見てから設備投資をしていかないと、自己資金の回収であったり、借金の返済が困難な状況になってきます。

 

ちょっと長々と書いちゃいましたが、まずは自分の立ち位置を知ること。真似する場合も同じぐらいの立ち位置の人の真似をするのであれば出来ると思いますが、そうでない場合はよほど運がなければうまくいかないのではないかと個人的には思います。

 

それでは。